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第94号 コラム『ランチェスターで斬る〜旭山動物園』

身近な話題から勝ち方の原理原則を考えるコラム
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■ランチェスターで斬る〜旭山動物園〜■■■
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先週、札幌に出張に行ったついでに、以前からどうしても見ておきたかった旭川の旭山動物園に行ってきました。

客寄せパンダもコアラもラッコもいない。二足歩行するレッサーパンダもいない小さな動物園。
だけど、昨年の7・8月、来場者数日本一となり、今や北海道観光の名所ともなった旭山動物園。
人口36万人の旭川市(といっても市街地から車で30分かかる)にある日本最北の動物園です。
http://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/files/asahiyamazoo/sc02.html 

動物園の中の動物園といわれる上野動物園をおさえての日本一ですから、とてつもない「弱者逆転」を果たしたのです。

かなり有名で、テレビや雑誌でもよく取り上げられていますからご存知の方も多いでしょう。
私も「見せ方の工夫」で成功したということは知っていましたが、やはり、生で、この目で確かめたくて、行ってきました。


私はときどき、気分転換に上野動物園に行きます。
でも、行くたびに思うのです。
あ〜、気の毒だなぁ。
自分だったら檻の中に入れられて、腹も減らないのに飯ばっかり食わされて、一日中ジロジロ見られる生活なんて耐えられない、と。

大の大人ですから、寝てばかりいる動物を見るのも、ちょっと、うんざり。
見た目の珍しさや、可愛らしさは、あくまでも子供向きのものか、と。


▼行動展示・生態展示▼


こういう見せ方を「形態展示」というそうです。
動物の姿・形を見せる、という意味です。

これに対して旭山動物園は「行動展示」あるいは「生態展示」という見せ方をしています。全部ではありませんが。
野生動物本来の、そのまんまの行動・生態に近い状態を見せています。

たとえば、オランウータンは地上10数メートルのジャングルジムみたいなところにいます。
下に安全ネットなんて敷いてありません。
人間との敷居も低く、ウータンがいる樹の下にいる気分です。

「落ちたら、どうするの?」
「降りてきて、人間に襲いかかったりしないのか?」
と、考えれば、到底、許されない展示方法ですね。
でも、これはウータンの野生の生態を知らない人の考えです。
野生のウータンは樹上生活動物なのです。
樹の上にいることが普通で、決して落ちないし、降りないそうです。

また、シロクマ館には、手書きの説明看板がつけられています。
シロクマって愛くるしいイメージかもしれないけれど、ホッキョクグマが正式名称で、陸上最大の肉食獣。
エサはアザラシ。その狩りの仕方は・・・今、隣でアザラシを見てきたというのに、生々しいなあ、と思っていましたら、
「さあ、あなたも、アザラシ目線で、ホッキョクグマと対面しよう!」

ホッキョクグマのすぐそばに透明なカプセル状の穴ぼこに入って、エサになるアザラシの気分!?を味わえる仕掛けです。
スゴイ迫力でした!


なるほど、形態だけでなく、生態や行動を見せるとは、こういうことか、と合点がいきました。

ですから、決して芸をさせたり、野獣をペット扱いするような、いわゆる「見世物」扱いしていないのです。

動物は好きだけれど、動物園に行ったときや、サーカスなどで動物のショーを見たときに感じる「もの悲しさ」「やらされ感」を感じない見せ方なのです。
だから、とてもホッとします。見ていてあきません。


▼差別化戦略の真髄▼


最北の小さな動物園は、この行動展示・生態展示という見せ方で弱者逆転を果たしたわけですが、では、なぜ旭山動物園は、これができたのか。


旭山は、札幌郊外にある円山動物園のミニチュア版のような存在として開園したといいます。
レジャーが多様化するにあたって、これでは存在価値がありません。
円山と同じことをやっていてもしようがないわけで、差別化をしようと。

しかし、予算がありません。ハード面や希少動物を見せるといったお金がかかることはできません。
それなら旭山は、あまりお金がかからないソフト面で勝負しようと、知恵を絞ります。

たとえば、動物紹介は手書きの看板で。
業者に発注するお金がなかったがための苦肉の策ですが、手書きにしたことによって、かしこまった解説ではなく担当者の思いが、生の声として伝わりました。

それから、担当者の解説タイムや、給餌タイム。さらには夜の動物園。

旭山動物園では、飼育員のことを「飼育展示員」と呼んでいます。
飼育するだけでなく、見せる、伝える要素を重視していることの現われですね。

そして飼育展示員さんたちは、野生動物はすごいんだ、見世物ではなく本来の野生の姿を見せたいと、計画を練り、14枚のスケッチ図を91年頃には描いていたそうです。

94年、寄生虫騒動が起き、来場者は激減し、存亡の危機に直面しますが、園長はじめ、展示飼育員さんたちの志はくじけず、行政の理解も得られ、次々と話題の「見せ方」ができる新動物舎ができ、スケッチ図は実現化していったのです。


ここに弱者の基本戦略である差別化戦略の真髄があると私は思います。
差別化は弱者生き残りの命がけの挑戦です。
小技も大切ですが、そこに信念の裏づけがあるかが、問われるのです。

旭山が話題になると、多摩動物園でもオランウータンの綱渡りを始めたり、あの上野動物園ですら「行動展示」といい始めています。
まさに強者のミート戦略が始まりました。

でも、弱者の差別化に信念の裏づけがある限り、ミートされてもつぶされることはないでしょう。



投稿者 戦国マーケティング : 2005年8月31日