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経営戦略のバイブル

第187号【小沢一郎の戦略を斬る】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━第187号━2007/08/01━━━
        ランチェスター戦略『一点突破の法則』       32,322部
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     ランチェスター戦略コンサルタント 福永雅文 発行

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弱者逆転を使命とし、一点突破のマーケティングである
「ランチェスター戦略」を伝道しているコンサルタントの福永雅文です。

東京では本格的な夏になる前に8月になってしまいました。
地球環境の異常を感じますね。


さて、参議院選挙では自民党が歴史的な大敗をし、参議院では
与野党が逆転、民主党が第一党になりました。
政権交代の可能性が高まりました。

そこで、今回は弱者の民主党が強者の自民党になぜ、勝てたのか
ランチェスターで斬らせていただきます。
なお、本誌はビジネス誌であり、政治的な意図は何もありません。
ビジネス戦略を考えるケーススタディとして取り扱っています。

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(1)ランチェスターで斬る ■小沢一郎の戦略を斬る■
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        なぜ、自民は大負けし、民主は大勝したのか。
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7/29に行われた参議院選挙の自民党・民主党の結果は下記の通りです。

   改選議席  当選者(増減) 選挙前勢力  後の勢力(順位)
自民  64 ⇒ 37(−27)  110 ⇒  83(1位⇒2位)  
民主  32 ⇒ 60(+28)   81 ⇒ 109(2位⇒1位)

・・・と見事にその勢力が裏返りました。民主の歴史的大勝です。

では、なぜ、民主は弱者大逆転ができたのか。

それは、マスコミで語られている通り
年金問題、閣僚の金と自殺と失言とバンソウコウ、そして
そんな閣僚の親玉である総理のリーダーシップの欠如、ということでしょう。

そもそも小泉改革によって自民の地方組織はぶっ壊され、
格差問題が背景にあったと思われますし、
「郵政解散」で自民を勝たせすぎたことへ民意が「振り子の論理」で
揺り戻したことも確かでしょう。

しかし、島根県や岡山県のように、そうはいっても、ここは大丈夫でしょう、
というところまで負けたことは、政界関係者も大ショックでした。

なぜ、そこまで自民は大負けし、民主は大勝したのか。

私(福永)は民主党小沢代表の選挙戦略「一人区への重点化戦略」こそが、
ここまでの大勝利につながったとみています。

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             一人区への重点化戦略
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「一人区」とは当選者が一人だけという選挙区です。
「二人区」以上は自民・民主が議席を分け合う可能性が高く、あまり差がつきません。
しかし、一人区は「一騎討ち戦」となり、勝ち負けがはっきりつきます。
岡山のように現有議席が自民のところを勝てば、こちらは+1議席するのみならず
相手は−1議席するわけで、あわせて2議席の差がつくわけです。

そんな一人区が全国で29県あります。東北・九州・四国・北陸・中国などの
人口の少ない県(はっきりいえば田舎)がだいたいそうです。

今回改選した参議院議員は01年の参議院選挙の当選者ですが
01年は小泉ブームで一人区は自民が25勝2敗と圧倒しました。
04年は年金未納問題や人生イロイロ発言で自民の14勝13敗と互角。
と、「一人区を制するものが勝つ」構造なのです。

そして今回は民主系が一人区で23勝6敗と圧勝したことが
全体で民主60議席、自民37議席の23議席差になったのです。

ただし、このことは、政界の常識であり、
安倍さんも当然、よく知っていることです。
しかし、わかっていることと、やるということは全く違います。

やはり安倍さんが遊説した先は大都市と地方でも中核都市が中心でした。
多くの聴衆に生身の安倍を見せることを重視しました。
無党派層の取り込みを意識した「空中戦」です。

現職の総理のプライドもあったのでしょう。
郡部でみかん箱の上で、という演説はなかったように思います。


一方の小沢さんは民主党党首になった1年前から
徹底して「一人区まわり」を行ったといわれます。
大都市や国会論戦は菅さんや鳩山さんにまかせてひたすら一人区へ足を運び、
脆弱といわれた民主党の地方組織固めに取り組んだのです。

まさに「接近戦」です。

小沢さんは総理との党首討論ですら消極的で、批判もありましたが
誰に何といわれようと一人区まわりをやめませんでした。


選挙戦に入っても、一人区を中心に訪問、しかも、郡部でみかん箱にのって
演説を繰り返しました。一人区といっても、たとえば岡山県には岡山市という
政令指定都市を目指しているような大きな都市もあるのですが、
郡部を重視しました。

これには3つの戦略的意図があるように私には思えました。

1)自民の地盤である郡部で勝てば、味方+1、敵−1のあわせて2票の差がつく
2)県庁所在地ではなく郡部で遊説することで地方重視の姿勢を強調できる。
  それに郡部には、安倍さんや自民有力者は来られないだろう、
  そこへの接近戦は効果的で、差別化できる
3)直接対面できる人数は少なくても、自分が行けば地元マスコミが報道するから
  選挙区内の郡部の人はもちろん、全国の郡部へ「民主・小沢の地方重視」は
  伝わる。これは空中戦の考えですね。

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           小沢戦略をランチェスターで斬ると
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ランチェスター弱者の基本戦略は「差別化」。
その具体的な戦い方として5大戦法があります。
「局地戦」「接近戦」「一騎討ち戦」「一点集中主義」「陽動戦」です。
さらに私(福永)は「空中戦(情報戦、集客・販促)」という戦い方も重視しています。

今回の小沢さんの戦略は、弱者の戦略に徹したなあ、という印象です。

地方切捨てのイメージのある今の安倍自民に対して
地方重視、格差是正、政権交代による政治の浄化という明解な対立軸で「差別化」。

そして勝つか負けるかは五分と五分。現有をひっくり返せば、あわせて2議席差を
つけられる「一騎討ち戦の選挙区=一人区」に「一点集中」。

さらに一人区のなかでも、票田の多くない郡部という「局地戦」的地域に入り
「接近戦」を展開。この姿がマスコミに報道され「空中戦」効果も。

「陽動戦」とはゲリラ的奇襲戦法や、相手の心理的動揺を誘い、
こちらの手の内を見せない情報戦の戦い方です。

岡山で敵の大将格の片山虎之助自民党参議院幹事長に「姫のトラ退治」の
キャッチフレーズで話題性を作り、本当に退治しちゃったことなんかは
1つの奇襲戦法だったといえますね。

それよりも、開票日の日曜日と月曜日に雲隠れした(静養とのことですが)
ことが、意図的であるならば、陽動戦なのかもしれません。

失礼ながらコワモテの小沢さんの「勝った、勝った」という顔がテレビに
露出すると反感を買い、「安倍さんがカワイソウ」というムードに
なったかもしれません。

小沢さんが露出しないなか、内閣居座りを決めた安倍さんは、
「なぜ、辞めないのか」とますます支持率は落ち込み、
最悪の形で衆議院解散に追い込まれる可能性が出てきました。

そこまで考えての雲隠れなら、手練手管が目立ちすぎて、嫌味ですが
陽動戦には、そうした「奇策」の意味合いがあります。

かつて細川さんを総理に担いだり、敵方の渡辺ミッチーを
担ごうとしたり、自由党時代に自民党との合流を画すなど
小沢戦略の真骨頂は、この「陽動戦」にあるのですが、それゆえに
「策士、策に溺れ」の傾向もあります。


小沢さんの持論の政権交代可能な2大政党体制、
政界再編への最大で最後の戦いの第二幕の始まりです。

戦略ということを考えるケーススタディとして目が離せませんね。

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           小沢戦略にビジネスパーソンが学ぶべきは
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大きな市場と小さな市場。

売上や生産性を考えると、大きな市場を重視し、小さな市場は後回しになります。
強者ならば、それでよいのでしょうが、弱者は大きな市場で小さなシェアしか
確保できず、いつまでたっても負け犬のままです。

小さな市場を重視することは生産性も低くなりますし、売上も上がりにくいです。
だけれども、それゆえに強者は重視しないので、弱者であっても
そこに対して接近戦で攻略すれば、勝つことができます。

地域でいうと盆地・島・半島・ぽつんと離れた港町、と要するに田舎です。
こうした地域は代々その地に住み着いている土着型の人々(うちもの、という)で
保守的なので、入りづらいですが、いったん入ってしまえば固定化され
シェアも集中し、安定します。

人々が流動的で不安定で物量が必要な都市部よりも弱者にとっては狙い目なのです。


弱者は何かで一番になることが大切です。
小さな市場であっても一番になればその市場では強者。
こうして地盤を築くことができたら、そこを策源地にして次なる
一番づくりを目指します。こうして各個撃破していけば、
いずれいつの日か、全体で勝つことも可能です。


「弱者は小さな市場で大きなシェアを!」


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■発行人 : ランチェスター戦略コンサルタント 福永雅文
       戦国マーケティング株式会社 代表取締役
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*謝辞
ランチェスター販売戦略は、昭和45年に故田岡信夫先生が
ランチェスターの戦争の法則から初めて導き出したビジネスの戦略思想です。
「勝ち方には一定のルールがある、その基本的思想をランチェスター法則
から学び取れ」が先生の一貫した主張でした。
そして先生は、ランチェスター法則をすべての戦略哲学の中核に据え、
複眼的で弁証法的な発想と、知的な論理の展開法を重視し、
今日のランチェスター販売戦略の全体系を築きあげました。
本誌発行人・福永雅文は本誌を発行するに当たって
先生の先駆的業績に敬意を払い、ここに衷心より感謝の意を表明します。
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●8/15(水)はお盆休みのため、発行しません。それ以外、毎週水曜日発行。


投稿者 戦国マーケティング : 2007年8月 1日