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ソフトバンクの孫さんが起業戦略を考えていた、ちょうど同じ1980年、新宿西口の雑居ビルの8坪の事務所で起業したのが、2005年度の海外旅行取扱い人数が単独の会社としては日本一になった旅行会社のHISです。
現会長の澤田秀雄さんが、奥さんと知人1名の3名で始めました。バッグパッカーであった経験を活かして海外航空券を格安で販売する事業として。旅行会社というよりもチケット屋さんですね。こんな零細な会社が、元々、公営であったガリバーのJTBを単体の送客ベースとはいえ、大逆転できたのはなぜでしょうか?
澤田さんは零細な起業時から、2番手を圧倒するダントツの1番(ランチェスター戦略が定義するナンバーワン)になることを至上命題としました。彼は「市場におけるナンバーワンは単にナンバーツーの上という序列以上に、決定的な立場を築くことができる」と位置づけました。「市場のトップシェアを占めることにより、仕入れ、販売に対する市場決定権の優位が保てる」からです。それが「自分の力の2倍、3倍もの力を発揮でき、一気にナンバーツーを引き離すことにもつながる」と語っています。孫さんと全く同じですね。
ここで大切なことは将来ナンバーワンになるためのシナリオを持つことです。
起業時点は誰もが弱者です。総合的なナンバーワンを将来目指すにあたって、さしあたっては部分的な狭い範囲でのナンバーワンを目指しなさいというのがランチェスター戦略のセオリーです。これを「一点集中主義」といいます。
ですから、澤田さんは海外航空券の格安販売事業だけに集中して、その分野でナンバーワンになるまでは、浮気せずにやりぬく決意をします。こうしてHISは旅行業界のニッチャーとして急成長していきます。そして会社の規模が大きくなると、意欲ある若者が入社してくるようになります。優秀な彼らはこう言ったそうです。
「社長、どうしてうちではパッケージツアーをやらないのですか。HISと同じレベルの会社がどんどんパッケージツアーを始めています」と。
それでも、澤田さんは動きませんでした。弱者はナンバーワンになるまでは他に手を広げてはならない、というランチェスター戦略理論をマスターしていたからです。旅行企画をやりたいという前向きで優秀な社員の中には、この澤田社長のランチェスター式の戦略が理解できずに、辞めていった人もいたとのこと。
「泣いて馬謖を斬る」思いだったそうです。
そのかいあってか、HISは格安航空券販売の分野でナンバーワンになり、その収益を原資にパッケージツアーの分野に進出。ついに05年度、部分的にはJTBを逆転するに到るのです。
今号の結論は「ナンバーワンになるためには一点集中すべき」です。次回は一点集中した後は、どのようなシナリオを描くべきなのか、スポーツ用品メーカーのアシックスの鬼塚喜八郎さんの事例で解説しましょう。
投稿者 戦国マーケティング : 2007年8月11日