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    No.217 アサヒ大逆転を張本人に訊く
 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━第217号━2008/05/07━━━
        ランチェスター戦略『一点突破の法則』       31,325部
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     ランチェスター戦略コンサルタント 福永雅文 発行

(1)5月の公開セミナー情報
(2)ランチェスターで斬る・・・「アサヒ大逆転を張本人に訊く」
(3)お奨め情報
(4)近況報告・・・「のぼうの城」読むとよいでしょう
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先日、女優の羽野晶紀がテレビで紹介した飲用コラーゲンが
大ブレイクしていますね。このように
「マスコミで報道された」ことが小さな会社がブレイクする
起爆剤になったケースは数知れず。
マスコミで報道される方法を知れば、弱者逆転ができます。

   
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小が大に勝つ弱者逆転を使命とし、一点突破のマーケティングである
「ランチェスター戦略」を伝道しているコンサルタントの福永雅文です。

ゴールデンウィークも明けました。
本日は休みボケを吹き飛ばす、元気の出る話を書きました。
「アサヒビールの大逆転劇」です。

私が理事・研修部長を務めるNPOランチェスター協会で、4/21
アサヒビール名誉顧問の中條高徳先生をお招きして、
第179回ランチェスター戦略研究会が開催されました。

中條先生はアサヒのはえぬきで、同社がドン底のとき
常務取締役営業本部長に就任し、「アサヒビール生まれ変わり作戦」を指揮し、
シェアを反転させ、大逆転に至らしめた張本人です。

研究会では中條先生のご講演をお聴きした後、
不肖・福永がランチェスター的な解説をし、専門家の立場で
三点、質問させていただきました。

「アサヒの大逆転×ランチェスター戦略」です。
その内容をレポートいたしました。

感想など、遠慮なくメールくださいね。
info@sengoku.biz


★その前に、うれしいお知らせです。 

拙著第1作「ランチェスター戦略『弱者逆転』の法則」
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おかげさまで11回目の重版が決定しました。
05年05月発行から2年、しぶとく売れ続け、とうとう4万部を超えました。
これも本誌読者のあなたのおかげです。
本当にありがとうございます。

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(1)5月の公開セミナー情報
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   【5/28夜 経営者の勉強会(東京)】
   *クローズドな勉強会です。

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(2)ランチェスターで斬る ■アサヒ大逆転を張本人に訊く■
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          大逆転を指揮した中條先生への3つの質問
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1980年代に入りシェア9.6%まで落ち込んでいたアサヒ。
キリンは60%を超えて独禁法も取り沙汰されていた頃。
(サッポロは20%程度、サントリーは9%台でアサヒをとらえつつあった)

1986年、アサヒは“コクキレ”生ビールを投入し、シェアが反転上昇し10.4%。
翌87年、その発展系の“スーパードライ”を投入しシェア12.9%、
翌88年にはシェア20.6%でサッポロを抜き去り2位に浮上。
98年にはビール単独で、そしてついに01年にはビール系飲料総合で
キリンを抜き、1位に到ります。

この我が国のビジネス史上でも稀な「弱者大逆転劇」はなぜ、起きたのか。

・キリンが独禁法を気にしていた
・酒類の販売経路が「酒屋」中心から「スーパー」「ディスカウンター」へ
 シフトしていくことに酒屋が弱いアサヒが先乗りできたが、
 酒屋に強いキリンは後手にまわった

などの追い風要因もあったとは思いますが

直接的な要因は
●キリンラガービール全盛期に生ビールで差別化し、重点化したことです。

ですから、「スーパードライ」という生ビールによって大逆転した、
と言ってよろしいわけですが生ビールで勝負をかけることは、
何も、このとき突然閃いたことではないはず。

そこで、私は、この大逆転劇を指揮した
当時、常務取締役営業本部長であった中條高徳先生に3つの質問をしました。

1.生への差別化はいつから、どのように取り組んできたのか?

2.生への集中への舵は、いつ、どのようにきっていったのか?

3.スーパードライがヒットしたことにより、キリンなどが強者の基本戦略
  であるミート(追随)してきて、いわゆる「ドライ戦争」が起きたが
  経営資源に乏しかったアサヒが、いかにしてミートにつぶされず
  攻撃を跳ね返していったのか?

3の質問への回答は、同業者との係争など大変生々しいので
ここで書くことは差し控えます。以下、1・2の質問への回答を書きます。

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          1964年から生で差別化しようとするが
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戦前のビール業界は大日本ビールがシェア75%、キリンビールが25%でしたが
占領軍による1949年の経済力過度集中排除法によって、大日本ビールは
東日本=サッポロ34%、西日本=アサヒ34%と二分割され、
残り33%がキリンとなりました。
ここからキリンの繁栄とサッポロ、アサヒの凋落が始まりました。

1963年にはアサヒは25%へ下落、キリンは48%へ上昇します。
そのことを憂いた中條主任(当時)は、山本為三郎社長(当時)から直接、
抜本的打開策を考えるよう指示を受けます。

中條主任は調べます。

・ビールは生で飲むほうが旨い
・しかし、生ビールは腐る・痛むので熱処理を施すことにより
 取り扱いしやすくしている。これがラガービール。
・キリンはラガー中心で自社の2倍近いシェアをもっており
 これと正面から戦うのは不利。
・アサヒは生ビールのパイオニアであり、生の評判がよい。

したがって1964年以降、「生ビール」で勝負すべきだと答申します。
そして、見た目も差別化するために、ずんぐりむっくりの瓶
「アサヒスタイニー」を発売することが決定されます。

1964年、山本為三郎社長は次にように社員に訓示します。

「(前略)どうかこの商品をもって市場に躍り出て、われわれが優位に
 立ちうるようにラストヘビーをかけていただきたい。私の一生をかけた
 仕事であり、私の最後の仕事であることを十分に感得していただき、
 一層の精励を希ってやみません」

誠に弱者の戦略のセオリー通りの意思決定です。
結果、シェアは向上します。

しかし、生への差別化・集中化は長続きしませんでした。
1966年、山本社長は死去し、この路線はないがしろになるのです。

当時、世の中は高度経済成長期。
シェアが少々下がっても、ボリューム市場であるラガーを売っていれば
売上は上がっていたのでしょう。

アサヒは生以外にも

・缶ビール
・ビール券
・ミニ樽などのユニークなパッケージ
・カクテルなどのビール系飲料

など、差別化を他社に先駆けて行いますが、どれも集中しきれません。

こうしてアサヒのシェアは長期低落傾向に陥るのです。

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            集中化へのベクトル合わせ
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1982年、シェアどん底のとき中條先生は常務取締役営業本部長に就任。
中條常務は「生」で差別化し集中するという信念を実現するために
兵法経営で戦うことにします。

「将たるものは方向を示し兵站する」との兵法の教えに従って
社員のベクトルを合わせます。

・経営理念策定
・CI変更
・中期経営計画策定
・TQC活動

これらをミドル(部課長)中心に取り組ませます。

こうして「生」で差別化し集中する戦略を全社の共通言語にしていくのです。

経営陣には、「生」は社内売上構成比40%しかない、「ラガー」が60%であり、
これを半ば捨てようとする中條常務の集中路線への異論はもちろんありました。

中條常務も、直ちにラガーから撤退するようなハードランディング論者では
ありません。「いま現実に、市場に当社のラガーがあるのは、商売の現実対応
でしかない。私の胸を引き裂くことが可能ならば、胸のうちには生しかない」

こうして“生ビール教の教祖”とも呼ばれた中條常務の
「生」への集中化は、燎原の火のごとく支持を広げていったのです。

レイオフ、本社社屋売却など徹底した身を切るリストラを敢行後、
原料費に糸目をつけずに製品開発し、
5,000人もの大規模味覚調査を実施し、完成したのが
「コクがあってキレのある」二律背反する味の両立に成功した
いわゆる「コクキレ」ビール。これをひっさげて
「アサヒビール生まれ変わり作戦」は始まるのです。

その作戦開始日は1986年2月4日。
中條常務がほれ込んだ山本為三郎社長(当時)が亡くなった
1966年2月4日のちょうど20年後の命日だったのです。

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            大企業は弱者の戦略を取りにくい
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アサヒは1964年、中條主任(当時)発案の「生への差別化・集中化」路線を
徹底できていれば低落傾向は食い止め、凋落することはなかったのでは、
と私(福永)は思います。

ランチェスター弱者の戦略は、市場を細分化し集中化し
差別化し、その狭い市場で一番化していくことです。
ビール市場全体で戦うのではなく、生ビール市場へ集中化することは
誠にセオリー通りのこと。

しかし、このシンプルなセオリーも現実的には実行されにくいのです。
特に大企業においては。

アサヒは最低時シェア9.6%まで落ち込んだとはいえ、
当時ですら従業員は3,000人以上はいた大企業でした。

大企業であっても当該市場1位でなければ「弱者の戦略」で戦うべき
というのがランチェスターのセオリーです。

しかし、大企業、とくに名門企業は特に自らを「弱者」とは定義しにくいもの。
「日産」も「鐘紡」も「ビクター」も名門の大企業です。
「アサヒ」も含めて、こうした名門大企業で市場1位でない会社の多くが
長期低落していったことを忘れてはなりません。


●次回第180回ランチェスター戦略研究会は6/2(月)18時から
 東京・九段会館で開催されます。

 ご講演は下着メーカー2位のトリンプ前社長の吉越浩一郎先生です。
 そして、次回もまた不肖・福永がご講演後にミニ解説を行い、
 ランチェスターの専門家の立場で2、3の質問を吉越先生にさせて
 いただく予定です。

 トリンプの弱者の戦略については以前、メルマガで書いています。
 http://www.lanchester.or.jp/02/back_200806.shtml 


●弱者の戦略・強者の戦略は
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(3)お奨め本
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(4)近況報告 【「のぼうの城」読むとよいでしょう】
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ゴールデンウィークのように休めるときは
普段、なかなか読めない小説を読むのによいですね。

あなたは何かお読みになりましたか。

私は「のぼうの城」という歴史小説を読みました。
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これは既に天下人の秀吉の関東北条氏征伐のときの話です。

秀吉軍は本拠地小田原城のほか北条氏が支配する関東全域の諸城も攻めます。
その一つ、埼玉県行田市にある忍(おし)城での攻防戦を描いた小説です。

秀吉軍は兵力2万で、あの石田三成が指揮します。
三成は秀吉が備中松山で行ったのと同じ水攻めで忍城を攻めます。

守るのは忍城城代家老・成田長親が率いる3千。
この長親は「でくのぼう」との評判で「のぼう様」と呼ばれています。
武も智もない、この「のぼう様」には不思議な魅力があり
三成軍をさんざん悩ませ、翻弄します。

忍城は北条氏が降伏し、小田原本城が開城したことによって
開城しますが、本城が開城するまで抵抗を続けたのは、この城だけでした。

弱者大逆転とまではいきませんが
歴史に残る大健闘に「のぼう様」とその仲間たちの力があったのです。

歴史好きなら、ぜひお奨めします。

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■発行人 : ランチェスター戦略コンサルタント 福永雅文
       戦国マーケティング株式会社 代表取締役
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 ただし、引用して使用なさる場合は発行人までお申し出くださいませ。
*謝辞
ランチェスター販売戦略は、昭和45年に故田岡信夫先生が
ランチェスターの戦争の法則から初めて導き出したビジネスの戦略思想です。
「勝ち方には一定のルールがある、その基本的思想をランチェスター法則
から学び取れ」が先生の一貫した主張でした。
そして先生は、ランチェスター法則をすべての戦略哲学の中核に据え、
複眼的で弁証法的な発想と、知的な論理の展開法を重視し、
今日のランチェスター販売戦略の全体系を築きあげました。
本誌発行人・福永雅文は本誌を発行するに当たって
先生の先駆的業績に敬意を払い、ここに衷心より感謝の意を表明します。
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